掃除が出来なかった、ADHDのわたし

 

片付けられない女からの解脱。
それは、わたしが「半断食」をしたときのことでした。

断食はもともと、食べものを身体に入れないことで
24時間365日フル稼働している消化器や内臓を休ませることが目的。
半断食とは、本断食のように全く何も食べないのではなくて、
出来る限り胃腸に負担をかけない形で食べものを摂取しつつ
内臓を休ませる…というマイルドな断食方法。
本断食の場合は独断で行うと危険なために指導者によるサポートが必要ですが
半断食はそれほど注意しなくても、結構手軽に行えます。

で、それが「体質改善にすごくいいらしい」と母が聞いてきたのでした。
折りしも、「なんか身体にいいこともっとやってみたい!」という好奇心がピークの時期。
ちょうど父親が長期出張で不在だったのもあり、母と2人で「とりあえず一週間!」
一日、玄米一合をよく噛んで食べる…という半断食を始めたのでした。

半断食、ものすごく面白かったのですがまぁ経過は省略して。
驚いたのが、半断食後の自分の変化。

荒れ放題の部屋を見て、ふと思ったのです。
「なんか汚くて、キモチワルイ。落ち着かない」
そしてまずは床のゴミを広い、捨ててみる。少しスッキリする。
散らかっている服も集めて、洗濯物は洗濯機へ。そうでないものはクローゼットへ。
散乱している本は、種類ごとにそろえて本棚へ。他の細々としたものもふさわしい場所へ。
降り積もった埃を払い、ようやく姿を見せた床に掃除機をかけると
部屋全体がすっきり、とても居心地の良い場所に変化したのがはっきりわかりました。

そうなのです、なぜだか掃除ができるようになってしまったのです。
それも突然に。

まず一番の変化は、「汚い状態=不快」だということをはっきり理解したこと。
散らかっていると自分が落ち着かない、汚い中にいるのが嫌だ。
今までなかったその感覚が突然芽生えたのでした。

そして、「目の前の状態をどうやって処理するか」ということが、
落ち着いてゆっくり考えられるようになったこと。
以前のようにイライラする前に、一呼吸置いて一つずつ解決していけば
自分にもちゃんと、目の前の事態を収拾できることがわかったのです。

掃除が出来るようになったことはもちろんものすごーく嬉しかったのですが、
それ以上に思ったのは、「こんなに簡単なことだったのか!」ということ。
これじゃ、「なんでこんなこともできないんだ?」と周囲が不思議がるのも無理ないなぁ…
と思ってしまうくらい、簡単に、あっさりとできたのです。

なぜ、半断食をしてからできるようになったのか。
はっきりとした因果関係は不明なのですが、わたしが一番納得している理由の一つは
「自分自身の身体がすっきりしたから、環境も整った」というもの。

それまでは身体の内部にいろいろと余計なものが溜まっていたので、
散らかっている環境=自分の内部と同じ状態。だから、気にならなかった。
けれど自分の内側がすっきりしてみると、環境が雑然としているのが落ち着かなくなる。
だから、「汚い=不快」だと感じるようになる。
そして、自分がすっきりしているので、いろんな情報が一度に入ってきても
混乱せず、落ち着いて考えて対処できる。だから、イライラしない。

言葉にすると単純ですが、そのシンプルさを体感してみると、もうびっくり。
こんなに簡単だったんだ、楽なことだったんだ、そして当たり前のことだったんだ…
と、拍子抜けしてしまったのです。

そして家族は、わたしの激変ぶりに、もう驚くばかりでした…。
なにせもう10年以上、どんなに手を尽くしても改善しない泥沼劇だったのですから
まぁ気持ちはわかります。

マクロビオティックって、実はそういう「片付けの出来ない」などの症状?に
一番効果的なのだとあとから聞きました。
別に片付けられない人みんなが半断食をすれば直る、というわけではないと思うのですが
自分がすっきりすると、周囲の環境もすっきりさせたくなるし、できるようになる
というのは本当のことなのだなぁ、とわたしは身をもって実感しています。

少なくとも、今のわたしは「掃除をする意味」がわかっています。
確かに、洗濯ものはたたまない方が合理的。だってすぐに使うんだもんね。
部屋の掃除も、どんどん汚れる→片付けるの循環をひたすら繰り返すのだから、
こまめにやる意味なんてないのかもしれない。
でも、やっぱりこまめに掃除をしたり洗濯ものをたたんだりするのは、人間にとって必要なこと。
なぜならそれが「気持ちいい」から。
場所をすっきり整えることが、自分にとってすごくいい作用を及ぼすことだから。
はっきりした理屈というのはなくて、ただそういうのは絶対的なことなのだと感じています。

理屈じゃないんですよね。感覚なのです。
だから、掃除をするメリットをわかっていない人に、無理に「掃除をする習慣」をつけさせても
「ストレスを理性で抑える訓練」にしかならないのです。
掃除そのものではなくて、目の前の情報が整理できなくて途方にくれている人に
無理矢理気合で頑張らせても、やっぱり自分の混乱を抑える訓練にしかならない。

テレビなどで片付けられない人の部屋や、ゴミ屋敷などの報道を見かけるたびに思います。
たぶん、この人たちには「だらしない」とか「習慣がない」とか以上の、
何かもっと根本的な原因があるのではないだろうか?
だらしないのも習慣にならないのも、その原因に由来しているものではないか?と。

もっと根本の、感覚そのものが変わって、「自分が気持ちいいところに住みたい」という欲求を
きちんと感じて、受け止めて、行動できるようになることが必要なのだと思います。
それをもたらすのは、もちろん心理療法や行動療法でもいいのだと思うけれど、
「食べるもの」を変えるのは、意外なほど効果的なようです。
それはわたし自身が実際に体験したことでもあるし(今は気分よく、楽しく掃除できます!)、
マクロビオティックを始めてからADHDの症状がとても緩和された、という人にも会ったことがあります。

だから、もしあなたが「片付けられない症候群」なら、ぜひ生活を、
特に「食べるもの」を整えてみてください。
自分の性格が悪かったりだらしないのではなくて、
身体が片づけを出来ない状態なのだ、ということを受け止めて
自分を責めるよりも先に、身体を整えることで解決に向かう方が、絶対お得です!



ちなみに。わたしは個人的に、頭の中がごちゃごちゃして整理が出来ない、
身体の内側もごちゃごちゃして、余計なものをいっぱい溜めている…というのは
添加物やジャンクフードが大きく関係しているのではないかなぁと考えています。
いつか「片付けるのが嫌いな人、片付けられない人」にアンケート調査ができたら
面白いだろうなぁ…。