マクロビオティック=制限食?

 

けれど…それでも、やっぱりマクロビオティックのバランスを体感したいと思うならば
「肉・魚・卵などの動物製品や、白砂糖などを極力減らす・摂らない」
ことを、わたしも個人的にはオススメします。

なぜならば。
マクロビオティックでいえば、これらの食べものはとても強い影響力を持っています。
けれど、現代社会で生きるわたしたちはこういったものを日常的に口にしている。
そうやって毎日のように、強いエネルギーのものばかりを食べていると
身体の感受性が慣れきってしまい、ちょっと鈍くなってしまう感じがします。

なので、そういった強いものを避ける・減らしてみると、
身体が少しずつ、食べものの影響を感じられるように変化していくのです。
例えば、白砂糖。
一週間でもいいからまったく摂らないでいると、次に食べたときには
そのあまりのはっきりとした甘さに驚くかもしれません。
「知らず知らずのうちに味覚が鈍っていた自分」に気がつくかも。

また、食べたときの「身体の反応」にも驚かれるかもしれませんね。
頭がふら〜っとして、思考がまとまらなくなって、でも気持ちはなんだかハイになってきて。
心臓がバクバクしたり、冷や汗が出る人もいるかも。
実はそのくらい、白砂糖って影響の強い食べものなのです。
「ええっ?本当に?大げさじゃないの?」と驚かれたかもしれませんが
この感覚、マクロビオティックを始めてほとんどの人が普通に感じ取れるようになります。
ただ、身体がその強い作用に慣れすぎていると、感じなくなってしまうだけだったのです。
我が家の父も、マクロビオティックについてはほとんど知らなかったものの
家族で同じごはんを食べている間に、白砂糖がすっかり食べられなくなってしまいました。
「食べると頭が痛くなるし、ふらふらして気持ち悪いから嫌い」なのだそうです。
(ちなみに、元々は大の甘党。若い頃からスイーツが大好きな人でした。)

以前、興味深い話を聞いたことがあります。
歌舞伎や能などの伝統芸能では、まず「型」をまねることから練習が始まるそうです。
言葉で教わるのではなく、先生の手本を見て徹底的に真似をする。
ひとつひとつの動作の意味はわからなくても、全てを身体で覚えていく。
そうやって体得していくうちに、自然にひとつずつの動きの意味が自分でわかってくるのだとか。

身体で覚える、ということ。
マクロビオティックのごはんも、これに近いかもしれません。
一度、強いエネルギーのものを控えてみることによって、食べものへの感受性が開かれていく。
そうなると、身体が自分に必要なものを自然と選べるようになっていくような気がします。

そういう感覚が一度育ってしまえば、あとはわりと自分で自由に選ぶことが出来ます。
例えば、友だちとのおつきあいのときは、お魚は食べちゃう。
けれど家に帰ったら、その分解を助ける「みかん」や「大根おろし」をしっかり摂る。
というか、段々そういうものが自然に食べたい!と思うようになってきます。

実際、わたしもおつきあいで居酒屋なんかに行って、わりとジャンクなものを食べると
帰り道ではずーっと玄米ご飯が頭に浮かんでは離れてくれなかったりすることがあります。
身体が全身で、玄米ご飯を欲している!という感じになるのです。
で、家に帰って玄米を口にいれると、ほっと身体が安心して落ち着いてくれる。
玄米にはバランスを整える作用があるので、それを必要としているんだと思います。
これは本当に特別なことではなくて、マクロビオティックを実践し始めてみると
ほとんどの人が無理なく自然に感じられること。
こういうことがあると、頭以上に身体は物を知っているのだな、と実感できます。

時には豪華なごはんを食べたり、ちょっと刺激的なバランスを楽しむことは
社会的には避けられないことが多いし、心のためにも大切なことですよね。
もちろんわたしもマクロビティック的に「強いバランス」の食事をすることはあるのですが、
そういう食事の後しばらくは、いつもの穏やかなペースに戻れない「自分」を感じます。
イライラしたり、そわそわしたり、夜眠れなかったり、なんだか落ち着かなったり。
むしろ、そういう時のほうが「不自由」だし、余計なものに「制限」されているなぁと思うのです。

そして、「いつものごはん」に戻ると、ほっと落ち着く自分がいます。
楽しい時間も大切だけど、やっぱり基本はここにあるなぁ…と、身体が教えてくれる感じ。
変に急いだり、イライラしたりすることなく、自分本来のペースに戻れるごはん。
わたしにとって、マクロビオティックのごはんはそういうものなのです。

自分本来の姿が戻ってくると、いろいろなことがわかってきます。
自分は本当は、どんなものが好きなのか。
何を心地良いと思い、何をしたいと思うのか。
どんなことで幸せになれるのか。
そういうことを、自分自身の内側から発見できるような気がするのです。

…アヤシイでしょうか?(笑)
でも、別に特殊なことはなにひとつ要りません。
高い壷だとかお札だとか印鑑だとかを買う必要もなく(笑)、
毎日のごはんを変えるだけ。それだけなのです。
ものすごく具体的で、実践的ですよね。


そんなわけで、わたしはマクロビオティックが「制限食」だなんて全く思いません。
もちろん、マクロビオティックを始めたばかりの頃は
それまで平気でたっぷり食べていた甘いものやジャンクフードが食べられない…
というストレスがひどくて悲しかったときもありましたが。
わたしの場合は「○ヶ月で病気を治す!」という目標があったために
ある日を境に、一気に食事を変えてしまったのが原因だったと思います。
やっぱりいきなりは無理がありますし、反動も大きいので
実体験からはあんまりオススメしません。(笑)

だから、取り入れられるところから少しずつ。
ゆっくりと、穏やかな方向にシフトしていくことができれば、それが一番。
ちょっとずつ、食べもののもつ力を感じ取れるようになっていくこと。
そして、よりなりたい自分に近づくために、その力を借りること。

そうやって、マクロビオティックの与えてくれる「自由さ」を
楽しむことが出来る人が、増えてくれればいいなぁと思うのです。
どうか、「制限食」だなんてもったいない誤解がなされませんように!